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東京ゴッドファーザーズ(2003)

/ 10 min read

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前書き

「奇跡」とは。

これをあえて定義するならば、私であれば「およそ常人では成し得ない離れ業」とするでしょうか。

漫画の世界でしか見ないような偶然に偶然が重なったスーパープレーとか、TVスペシャルでたびたび特集されるような九死に一生を得る出来事だとか。そういった、少なくとも一般的とは程遠い、現実離れした、しかし現実に起こった出来事を「奇跡」と定義してよいのかなと思います。もちろん努力あっての結果でもあるという前提の上で、ですが。

どこかで見かけた話では、「奇跡」とは単なる超常現象ではなく、神の栄光を現し、神の権威を証明し、人々を信仰に導くための神の働きである、らしいです。

要するに、神の存在を証明するための現象、ということですね。

たしかに石や水をパンやぶどう酒に変えたり、海を割ったり、そもそも「光あれ」という一言だけで光が現れるのは、人の努力どうこうの次元を遥かに超越した、まさに神の御業といえます。あまりにも現実離れしています。

現実離れした神の御業、我々の世界でそのような「奇跡」は目撃できないのでしょうか?

そんな事はないんじゃないかな、とふと思いたくなるのが、今回の映画です。

prelusion

『ホーム・アローン』や『ダイ・ハード』と共に、年の瀬に観たくなる映画です。

2003年、もう20年以上も前のお話ですよ。時間の流れは早いものです。

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OPで制作スタッフの名前が背景に溶け込む演出が大好きです。

本作は特にこの演出が特にオシャレというか、まるで街中にある数々の広告の一部であるかのように思わせる表現が巧みで好きなんですよね。

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こことか。よく見ると今敏監督作の『パーフェクト・ブルー』や『千年女優』のポスターが飾られている演出もたまりませんね。

こういった「OPで制作スタッフの名前が背景に溶け込む演出」では、キャラクターの台詞は省かれ、OPらしく一定の時間が費やされるのが一般的です。

しかし、本作では上のハナちゃんのように制作スタッフの名前が出ている最中でもお構いなく喋り続けています。他ではあまり見かけない演出だなぁと何回か観た上で今年改めて観て初めて気が付きました。こっちの方がキャラクターがイキイキしているように見えて私は好きですね。

このOP区間だけでも「頭上からのペンキ」や「突進してくる車」など、下手しなくても命を落とす事故を奇跡的に回避するシーンが挟み込まれます。本編中でも救急車が突っ込んできたり、車の下敷きになったヤクザを救出したり、探している家の手がかりを偶然見つけたりと、数々の奇跡が三人に降り掛かってきます。まぁ、ギンちゃんはおやじ狩りの被害に遭いますが。それもその後のドラァグクイーンに拾われるなどの奇跡につながるわけですが。

こういった、言ってみれば「物語を進めるうえで極端ともいえるようなご都合主義」は他の作品では忌避されてしまうおそれすらあります。しかし本作は「まぁそういうこともあるだろうな」と思わせてくれる、いや、思いたくなるシナリオ運びとなっているので違和感なくスルスルと馴染んでくれます。なんたってゴッドファーザーですから。清子ですから。

家族に見放された者、家族を知らない者、家族から離れた者。それぞれの複雑な家族模様を映しながら「それでもやっぱり家族はいいもんだよね」という観念を否定も肯定もしてくれる優しい作品です。こういうのって「家族は大事だぞオラァ!」と押し付けてくるものですが、本作は「まぁそういう関係もしんどい時ってあるよね」と受け止めてくれる温かさがあります。メキシコ系出稼ぎ母ちゃんとミユキとのやりとりで、言葉は分からなくても大切なことはなんとなく伝わっているあの感じも好きですね。

家族といえば、バーに帰ったハナちゃんのシーンも好きです。一番好きかも。本当の家族を知らないハナちゃんにとってバーのママは間違いなく「お母さん」だったし、そのお母さんに迷惑をかけて出ていったハナちゃんは紛れもなく娘のムーブなんですよね。自分がそうであったからこそ、本当の家族がありながらそれを自ら手放したミユキに対して優しくもあり、時に厳しくもなれたのかなと。時間を置いて複数回観ると、いろんな見え方ができてとても楽しいです。

ギンちゃんは、そう、ねぇ、責任感に疎く、それでいて家族思いで、家族を思った中で儲け話に騙されて、家族に見放されて。そんな踏んだり蹴ったりなギンちゃんが今の私にとてもブッ刺さります。家族が大切で、家族を思ってやった事がことごとく裏目に出るあの感じ、自分で自分の事が嫌になるんですよね。ギンちゃんはそれで家族に見放されたけど、実の娘は父親を無碍にしていない。父からの愛を理解している。優しい父を知っている。そこにギンちゃんの良さが出ているんですよね。

ハナちゃんはそんなギンちゃんがとても大切で愛おしく思っている。本編で言及があったように惚れちゃったとかそういう話ではなく、家族が本来与え与えられるべき「無償の愛」の対象として見ているのでしょうね。本当の家族を知らないハナちゃんにとって、ギンちゃんが家族のように愛おしい存在に思えている。泣ける話じゃない。

誰かに何かを指し向けられたわけでもなく、それぞれが本当の家族というわけでもなく、様々な事情を抱えた三人が、まるで家族のような温かい絆を結び合っているこの状況は、それはもう奇跡と言っても差し支えないのではないでしょうか。

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